10年愛してくれた君へ

「ねぇねぇ、竹内くん?私って何人目?」


わざとらしく上目遣いで見てくる彼女に男慣れしているなと思いながらも、『何が?』と聞き返す。


「彼女!かーのーじょ!私で何人目?」


あー、そういうことか。


「初めてだよ、高橋が」


そう言うと、高橋は元々大きな目を更に開かせて驚いた顔を見せる。


「え、嘘でしょ!?今まで彼女いたことないの!?」


…そんなに驚くことか?


俺の周りなんて、中学で付き合ったことがある奴の方が少なかった気もするけれど。


彼女にとってはそれは普通ではないようだ。


「…まぁな」


「へ〜意外だな〜」


どうしてか、高橋にはこれ以上俺の恋愛のことを深掘りしてほしくないと思い、無理やり話を逸らす。


「そう言えば、高橋は英語が得意なんだよな?もしかして、帰国子女とか?発音もいいし」


南の流暢な英語は授業でも聞いていたから、海外に住んでいた経験があるのだと思ってそう言った。


「ううん!英会話教室には通っていたけど、留学とかそういうのはないよ!」


「へー。やっぱり英語ができるのっていいよな」


「竹内くんだって頭いいし、スポーツだって得意じゃない!この前野球部の練習、ちょっと覗いたの」


「そうなの?声かけてくれればよかったのに」


「だってギャラリーが多いんだもん!竹内くん目当ての」


「ははっ。そんなんじゃないだろ」


俺は小学校の頃から地元のリトルリーグに所属し、中学、高校と野球を続けてきた。


大好きなスポーツだ。



「本当に自覚ないんだから、竹内くん」


「ん?」


「なんでもなーい」


南とは順調に付き合っていた。


特に喧嘩もすることなく、人を優先することに慣れてしまっている俺は、多少の南の我儘も笑顔で許す。


他人を優先することは、別に苦ではない。


そうすることで相手が喜ぶのなら、むしろ進んでそうしたい気持ちもあったくらいだ。


だから南にも同じように接していた。


けれど、喜んでくれていたのは最初だけだった…