-春人side-


春人…春のように温かい人になってほしいという両親の思いが込められた、俺の名前。


名前の由来を知る数少ない友達は、『親の願い通りに成長したな』なんて言うけれど、俺はそう思わない。


人に対して冷たい気持ちを持つことだったある。


だから、自分が温かい人間だと思ったことは一度もない。




今年も春がやって来る。


4月の頭に誕生日を迎える俺は、誰よりも早く年を一つ重ねる。


暖かな風が吹く、この季節。


花粉症の藍は春が嫌いだと言うけれど、俺は好きだ。


別に自分の誕生日があるからではない。


別れはあるが、新たな出会いもある。


そして何より…



【春兄!お誕生日おめでとう!!】



大切な子が祝ってくれる春が、俺は好きだ。


あ、だったら誕生日があるから春が好きっていうことにもなるか。


俺の大切な子…藍、鵜崎藍は俺の初恋でもあり、そして、今も思い続けている人。


藍とは幼馴染で、藍が生まれた時から俺は側にいた。


一人っ子の俺にとって、最初は妹のような存在だった。


藍も同じく一人っ子で、俺を本当の兄のように慕ってくれた。



俺が藍に対して特別な感情を抱き始めたのは、12歳、小学6年生のときだ。