10年愛してくれた君へ

「でもさー、鵜崎ってソフトしたことあるの?」


「この子は意外とスポーツはなんでもそつなくこなすタイプだから心配ご無用よ」


「充希プレッシャーかけないで」


受験生だというのに、話題は勉強のことではなく球技大会だから、呑気なものだ。



「ソフトはしたことないけど、春兄にコツ教えてもらえば多分大丈夫」


「春兄?」


「あ、春人さん、藍の幼馴染なの。野球経験者よね」


咄嗟に思いついたことだけど、そういえば春兄は就活だから、そんな余裕ないよね...いいや、ソフトは自力で何とか乗り切ろう。

学校行事の球技大会ならまだしも、今回はおまけのようなものだし。


「へー、幼馴染ね。俺も教わりたいわー。なんたって野球初心者だし」


「別にいいんじゃいのー?そんなガチにならなくても」


「おい伊藤!お前もスポーツを舐めているな!?」



一方通行に合宿の説明をべらべら喋っているのにこっちの会話は丸聞こえと言った感じに突っ込んでくる。



「うー、こわっ」


「お前らは黒山の扱い慣れてるな」


「まぁ私と充希は黒山歴2年目だし」


「なんだそれ、面白いな鵜崎」



あ、まただ。


また私に笑顔を向けてくれた。


会って間もないけど、この笑顔に安心感を覚える。なぜだろう...



この感覚を不思議に思いながら、私は行動表を折りたたみ、カバンにしまった。