河西くんと別れても、学校では今まで通りに接して来てくれた。
充希は別れの報告に特に大きなリアクションは見せず、またいつものような時間が流れる。
「あ、そうだあんた、今日誕生日じゃない?」
「え、そうなのか?」
充希の言葉に河西くんも振り向く。
当の私はすっかり忘れていた。
いつも誕生日が近づくと、春兄は毎年決まって私に欲しいものを聞いてくる。
特に誕生日なんて気にしない私は、毎年春兄のそれで『あ、もうすぐなんだ』と思うくらいだ。
だけど、今年は春兄からの連絡はなかった。
私の部屋から春兄を追い出してしまったあの一件以来、何となく距離を置く形となってしまっている。
謝りの連絡を入れようと思った矢先に南さんのあの話。
結局タイミングを逃したり気持ちの整理に時間が掛かったりで、全然連絡をとっていなかった。
あんな形で春兄と別れたんだもん、誕生日プレゼントのことなんて、春兄が言い出せるはずがないよね。
「その顔は、忘れていたわね?」
「あー、そのようです」
「全くもう。あ、そうだ、藍の誕生日軽く祝いに帰りにカラオケでも行かない?」
「おー!賛成!!」
軽くって酷いな。
でもまぁ、充希のこの"軽い"ノリが、私には心地よかったりする。
そんなわけで、私の軽めの誕生日会を開いてくれることになった。