10年愛してくれた君へ

「あれ?どうしてここに…」


私の問いかけに一拍おいて、南さんは答える。


「ちょっと、用があってね」


用って、私に?それともこの街のどこかに?


その真意が分からないでいると、南さんは近づいてきた。


「ちょっと話しない?ほら、あそこのカフェにでも入って。もちろんお茶くらいご馳走するわ」


「え!でもあのっ」


私の返事なんて聞かずに腕を引っ張られ、半ば強引に店の中に入って行った。



「私はカフェラテかな〜鵜崎さんはどうする?」


「…あの」


「いいのよ?遠慮しないで」


一番安いアイスティを選び、南さんはまとめて注文した。


飲み物はすぐに出され、お互いまずは一口、それを味わった。


「…うん、美味しい。たまにここのカフェに寄るんだけど、味が濃厚で好きなのよね〜」


「よく来るんですか?」


「えぇ、私の…元カレの地元がここなの。最近またよく会ってるんだけど、その時に寄ったりしてるわ」


胸がドキッとした。


きっと南さんは、私に何かを言おうとしている…そう思った。


「元カレ…?」


すると南さんはカップを静かにテーブルに置き、私の顔をじっと見つめた。


自然と背筋が伸びる。


「知ってるでしょ?…竹内春人。鵜崎さんの幼馴染よね?」


「!?」


どうしてそれを知っているの?


私は春兄の幼馴染として、直接彼女と会ったことは一度もなかった。


私が一方的に知っているだけで、ただ、それだけだと思っていたのに。


もしかして、春兄が話した?



「どうして知っているのか気になっているみたいね」


南さんはカップに口をつけて一口飲む。私も緊張からか喉がすぐにカラカラになり、南さんに倣うかのように同じ動作をした。そして言葉を続ける。


「春人と付き合っている時、何度かあなたを見たことがあるの。春人と一緒にいるあなたをね」


「え…」


そんなこと全く知らなかった。


確か春兄は、3年前に彼女と別れ、その彼女とは3年間付き合っていたって言っていた。


と言うことは、私が12歳から15歳の間。


その間に春兄と話したことなんて数え切れないくらいあるけれど、どこかで南さんが見ていた…?