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「えー、短い間でしたが、みんなと過ごしたこの1週間は、私にとってかけがいのないものになりました。今までお世話になりました」
今日は、南さんの教育実習最終日。
帰りのホームルームでの挨拶、思っていたよりも深い想い出になったのか、涙ぐむクラスメイトたち。
あれから春兄への連絡はできていない。
春兄からの連絡もない。
私があのメッセージに返事をしていないから、それは当然のことなのだけれど。
「これ、私からのほんのちょっとした気持ちです。前から配っていくわね」
南さんは袋から何かを一つずつ出し、前から順にそれを配っていき、生徒たちと軽く言葉を交わす。
「…はい、鵜崎さん。今までありがとう」
「こちらこそ…あの、1週間お疲れ様でした」
南さんから受け取ったものを見ると、それは手作りクッキーだった。
可愛くラッピングがされていて、クッキーの形もとても綺麗だ。焦げ目など一切ない。
手際よく作っている様子が容易に想像できる。
今日で終わりか…たった1週間だったけれど、私にはとても長く感じた。
ホームルームを終え、いつものように河西くんと帰る。
「まさかクッキーとはな〜。バレンタイン以外にこういうの貰えるとは思わなかったわ」
クッキーを上に掲げる河西くん。
「私お菓子とか作れないから、羨ましいよ」
綺麗で英語も出来て、お菓子を作れるなんて、非の打ち所がない。
そんな人が春兄と特別な関係だったなんて。ネガティブな思考がどんどん大きくなっていく。
「…あ!俺ちょっと用事思い出したわ!ごめん鵜崎、先帰ってて」
「え?」
私が顔を向けると、既に逆方向に走り出していた。あまりにも急で、しばらくその場に立ち尽くす。
河西くんが用事忘れるのって珍しいな。
そう思いながら、一人家路につく。
地元の駅に到着し、本屋に寄って今持っているものとは別の参考書を探す。数多く並んでいる中から一冊手に取り、パラパラとめくってみるが、既に有しているものと内容は特に変わらない。
あれでも結構難しいけれど、せっかく買ったんだし使い続けるしかないか…
肩を落として参考書を元の場所に戻す。
お店を出て、そこからまた歩いている時だった。
「鵜崎さん?」
声のする方を振り向くと、南さんの姿。



