その後、無言のまま私たちは帰った。


それは気まずさのある無言ではなく、今のこの時間、一瞬を噛みしめるかのように。



別れ際に『またね』と言葉を交わしただけ。




家に帰り、リビングに顔も出さずにそのまま自分の部屋に入った。


「春兄…」


静かな空間に、私の小さな声が響き渡る。


春兄のこと、何でも知っていたようで、実は知らないことばかりだ。


私の入る隙なんてないくらい、何かを背負っているのかな。


どんどん春兄が遠くなって行くような感覚に陥り、自然と涙が溢れた。


「…さっきも泣いたのに、バカみたい」


それでも溢れ出る涙。


それを拭うこともせず床に座り込んだ。




あぁ、気付いちゃった。


私、春兄のこと、好きなんだ。


幼馴染としてではなく、"特別な人"として。