「もし先輩と別れたら、遠慮なく奪いに行きますから」


言っていることは強気、だけど、そう言う彼女の顔は、笑みで眩しかった。


私の中で何か一つ、突っかかるものが消えた気がする。


それが嬉しかったのか、無意識に表情が緩んでいたみたいで…


「何で笑ってるんですか?」


「あ、いや、宣戦布告されてずっと目も逸らされていたから、何して来るんだろうってビクビクしてたのに、こんな感じだから」


「私が凶器持って殴りに行くとでも思いました?」


「そんなことはしないでしょ」


「分かりませんよ?鵜崎先輩は私のこと、ちょっとしか知らないですもん」




女同士の対立とか、いざこざとか、そういうのは面倒なものだと思っていたけれど、案外違うな。


それも、高橋さんが考え真っ直ぐぶつかってきてくれたおかげかもしれない。


彼女は『それじゃ』と、軽く会釈をして歩き出した。


私は高橋さんの姿が見えなくなるまで、その小さな背中を見送った。