スラスラとペンを動かし、自己紹介カードを記入する。似顔絵を描くスペースもあり、そこで手が止まった。


私、絵心全くないんだよね。中学の頃から成績は全体的に普通以下だが、その中でも群を抜いて酷かった科目が美術。


そのような私はどうにかしてうまく描こうという気持ちもなく、棒人間に顔とリボンを付け加えるというだけの簡易的なものに仕上げた。


あ、髪の毛も生やしてあげよう。




「本当に藍は絵下手ね」


カードを覗き込んで来る充希。


そういう充希だって、昔から絵は苦手だったはずだ。


「充希に言われたくないし〜?」


すると、充希は得意げに自分のカードを見せてきた。


「こういう時に頭を使うのよ」


「え!プリクラ!?それはセコいし」


似顔絵スペースに似顔絵を描かず、代わりにプリクラを貼っていた。


「こっちの方が本人だって認識できるでしょ?」


「まぁ、そう言われるとそうだけどさ」



書き終えた自己紹介カードを、次の南さんの授業の最初の方に提出した。


南さんが担当するのは英語の授業。発音も板書の字もとても綺麗で、授業の内容が身に入るというよりもその麗しさに意識が集中してしまう。



「じゃあ、このページを誰かに読んでもらおうかしら?」


南さんは手元の名簿に目を移す。


「…鵜崎さん。お願いできる?」


「は、はいっ!!」


まさか当たるとは思わず、声が上ずった。


「あら、緊張している?」


微笑み方もとても綺麗だ。


女の私でもうっとりしてしまうくらいの、女性らしい表情。


南さんの突っ込みにちらほら笑い声が聞こえてきた。


ちょっぴり恥ずかしくなりながらも、指定された場所を読んだ。