10年愛してくれた君へ



リビングに向かうと、静かな部屋でお母さんが一人、何かを見ていた。


いつもはテレビを点けっぱなしで、常にざわざわしている我が家のリビング。


普段とは違う環境に、引き込まれるようにお母さんに近づいた。


「お母さん?」


「あら、やっと起きたの?」


「知ってたの?」


「やけに静かだったからあんたの部屋に行ったら、あんたが寝ている横で春人くんが本を読んでいたわ。せっかく来てくれたのに、春人くんに迷惑かけるんじゃないって叩き起こそうと思ったら…」




『俺こういうの、嫌いじゃないんで』




「…って。どうやったらこんなに優しい子に育つのかしらね〜。そう思ったら昔のあんたたちが懐かしくなって、ほら、見て」


お母さんはさっきまで見ていたそれを私の方に向けた。


「…アルバム?」


「そう。藍と春人くんの写真だけを貼ったアルバムよ」


そんなものがあったなんて、知らなかった。


興味を持った私は、お母さんの隣に座り、それを眺めた。


「これ…私?」


指を指したのは、おそらく新生児であろう赤ちゃん。


その横でピースして笑っている男の子は…



「そう、生まれた時の藍と、春人くんよ」


「生まれたときから春兄と一緒だったんだね」


そう言えば、いつから春兄といるのかとか考えたこともなかったし、教えてもらったこともなかったっけ。


物心ついたときから隣にいた春兄。


そっか、私は生まれたときから春兄と共に成長してきたんだね。



お母さんさんはページをめくった。



「これ、春人くんらしいと思わない?」