リビングに向かうと、静かな部屋でお母さんが一人、何かを見ていた。
いつもはテレビを点けっぱなしで、常にざわざわしている我が家のリビング。
普段とは違う環境に、引き込まれるようにお母さんに近づいた。
「お母さん?」
「あら、やっと起きたの?」
「知ってたの?」
「やけに静かだったからあんたの部屋に行ったら、あんたが寝ている横で春人くんが本を読んでいたわ。せっかく来てくれたのに、春人くんに迷惑かけるんじゃないって叩き起こそうと思ったら…」
『俺こういうの、嫌いじゃないんで』
「…って。どうやったらこんなに優しい子に育つのかしらね〜。そう思ったら昔のあんたたちが懐かしくなって、ほら、見て」
お母さんはさっきまで見ていたそれを私の方に向けた。
「…アルバム?」
「そう。藍と春人くんの写真だけを貼ったアルバムよ」
そんなものがあったなんて、知らなかった。
興味を持った私は、お母さんの隣に座り、それを眺めた。
「これ…私?」
指を指したのは、おそらく新生児であろう赤ちゃん。
その横でピースして笑っている男の子は…
「そう、生まれた時の藍と、春人くんよ」
「生まれたときから春兄と一緒だったんだね」
そう言えば、いつから春兄といるのかとか考えたこともなかったし、教えてもらったこともなかったっけ。
物心ついたときから隣にいた春兄。
そっか、私は生まれたときから春兄と共に成長してきたんだね。
お母さんさんはページをめくった。
「これ、春人くんらしいと思わない?」



