「レイオウル様、ここにいらっしゃったのですね。ご夕食の支度ができましたよ。あら、聖女様も……」

2人を見つけて駆け寄ってきた侍女が、あらっと口に手をやる。その顔に少年は眉を顰めた。内心酷く焦りつつ。

「違うぞ、お前が思っているようなことじゃないからな?」

「大丈夫です、安心してください。誰にも言いませんから、ね!」

はあーっと大きくため息をつく。まあいいか。彼女の口が固いのは信用している。

「いやっもー可愛い~っ。あのっ、■■■■■様、いつからそのようなご関係なのです?」

興奮して聖女に対する敬意も忘れている。元よりそんなものを求めた気は更々無いので、少女は気にした様子もなく首を傾げた。

「ここに来てから1週間ぐらいの時からだったから結構前かな。あれから、私のことをいつもレイが助けてくれるの」

『ご関係』に関して侍女と少女に認識の違いがあるようだが、侍女は気づいた様子もなく悶えている。

「レイオウル様のどこがお好きなんですか?」

「おい……っ」

堪らず割り込もうとした少年が文句を言う前に、少女がにこっと笑ってひとこと。


「ひみつ」


侍女は何だか文句を言いつつ唇を尖らせていたけれど。

(えっ、『好き』って、ええっ……いや、まさか……)

ほんのりと少女の頬が桃色に染まっていたものだから、そんなはずは無いのに──淡い期待に少年は胸を抑えた。