「…………………え……?」

フェリチタは忙しなく目を泳がせた。いや、自分はこの人のことを知らない。外に出なかった自分に人間に知り合いがいるはずもない。

「いやあーっ久しいねえ。幾らなんでもあんまりにも音沙汰がないんで、町の皆でもしかしたらフェリチタはもう死んでるんじゃないか、なんて縁起でもないこと言ってたんだけどねえ。元気そうで良かったよ」

涙ぐみさえして捲し立てる女性にフェリチタは一歩後ずさった。

「みんな!フェリチタだよ!あの花屋んとこの!」

女性が張った大きな声に、通りで飲んでいた大人達がこちらを振り返る。

「フェリチタだって……!?おいアン、飲み過ぎなんじゃねえの?」

「あの子を見間違えるはずないだろ。元から美人だったけど、えらく別嬪さんになってるよ」

「ちょっと待ってくれアン、この子は森人の……」

途端に騒然となる町人たちの喧騒に負けじとレイオウルは声を張り上げたが、それを聞いてアンと呼ばれた女性はぎゅうっと眉を寄せて思いっ切り怪訝そうな顔をした。

「ええ?殿下ったら何言ってるんです?フェリチタは城に喚ばれたんですから。もう私共よりあなたの方が長い付き合いでしょうに」

「……喚ばれた……?あっ、フェリチタ!」