2人ともひとことも発さずに、ひたすら足を動かした。何を言えばいいかわからなかった。ただ、お互いの熱い体温だけが伝わってくる。どちらからともなくぎゅっと強く手を握り直す。
町が近づいてきた。大きな通りに面した家々には丸みを帯びた可愛らしい形のカラフルな洋燈(ランプ)が吊り下げられ、石畳のメインストリートを幻想的な色合いに照らしている。道の脇を流れる川には所々に橋が架けられており、小舟に乗った気の良さそうな船頭がこちらに向かって手を振っている。
「こうして枝分かれして国中走って、噴水や池、湖にもなっているんだよ」
「へえ……」
──『貴方たち森人が住んでいる森から湧き出る水を源流とした川が全国土に流れているんですが、この国の土地が細長いのはご存知でしょう?そのため長い川を流れるうちに水の成分が変わってきて、風味なんかも変わったりするんですよ』
いつかのドルステの言葉を思い出す。なるほど、確かにこれだけ長いなら納得できる。成分や風味ぐらい変わるかもしれない。
道の両側にずらりと並ぶ露店から漂ってくる、美味しそうな肉を焼く香ばしい香りに菓子の甘い香り。様々な香りが町中を満たしている。そしてそれ以上に、うきうきと心が浮き足立つような雰囲気が身体中に染み込んできて、思わずステップを踏んでしまいそうな気分だ。
目を輝かせる少女に気がついて青年はとうとう可笑しそうに吹き出した。
すぐ近くの露店に寄り、フェリチタに綿菓子を差し出す。初めて見たのか、口に含んで蒼い瞳を見開く少女にまた声を出して笑った。
それからも幾つか露店を回った。林檎を丸ごと使った飴、色とりどりの液がかけられた粉氷、姿そのままに焼かれた烏賊、目新しい物にフェリチタが驚く度にレイオウルは嬉しそうな顔をする。


