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再びフェリチタの部屋に戻った2人。病み上がりだからと横たわらせようとするレイオウルをフェリチタは手で遮った。

「フェリチタ」

少女を呼ぶ琥珀色の瞳が揺れる。それに気づかない振りをしてフェリチタは目尻を下げて微笑んだ。

「レイ。ヤーノに会いに行ってもいい?」

「……どうしても?」

「幼馴染みなの。私の事をいつも助けてくれてたから……だから、多分今、凄く不安だと思うから……」

目を伏せるフェリチタに、レイオウルは大きくため息をついた。

「わかった。その代わり、僕も連れて行って」


「──という訳で、改めましてこちらがクリンベリル王国第二王子、そして騎士団長のレイオウル殿下」

案内された客間で、フェリチタとレイオウルと、ヤーノの3人が机を囲む。

「久しいな、森人の青年」

「そんなに威嚇しなくても別に何もしやしませんよ」

「……」

「……」

青年2人はばちばちと不可視の火花を散らしている。どうやらまだ2度目の出会いながら既に馬が合わないようだ。気にしてもどうすることもできないので、フェリチタは2人の諍いを意識の外に追い出した。

「ねえヤーノ、お母様が行けって言ったの?」

「あの時贄を逃がしただろ。やっぱりお怒りだったみたいだ。今回誰かを送るとなって、真っ先に俺に白羽の矢が立った。断れるはずも無いし、覚悟していなかったわけでもなかったから、普通に俺が来たってわけ」

「やっぱり……ごめんなさい、ヤーノ」

「気にするな、お前のせいじゃない」