ここからは、友人としての要らないお節介なんでしょうけど、と、『友人?』と目を瞬かせたフェリチタを余所目にドルステは幾分か軽い口調で続ける。

「昨日、レイオウル様すっごい肩落として俺の部屋に来たんですよ。思ったようにいかない、必要以上に傷つけてしまった、距離を取るってどうやってやれば良かったんだ、って……おかしなことを言いますよね」

「え……どうして……距離を取るなんて、そんな必要が」

「貴方に気負わせたくなかったからですよ、フェリチタ様。自分の事を嫌いになれば、自分のせいで、と気に病む事もないだろう、とね。死ぬほど不器用なんですよ、あの人は」

(それに、必要以上に傷つけた、って……それはただの私自身のトラウマのせいなのに、殿下は勘違いして)

ドルステは、はっはっは、と心底可笑しそうに軽やかな笑い声を立てた。

「いくら男の知り合いが少ないからって色恋沙汰を俺に相談してくるなんてねえ……そんなこと、一生無いと思ってましたよ……」

暫く小刻みに震えていたドルステが次に顔を上げた時、フェリチタがぎくりとするほどに彼の目つきは鋭かった。

「ところで。先程ルウリエが決闘で死ぬ事は無いと言いましたが、それはあくまで希望的観測に過ぎません」

「……え?」

「審判を買収している場合、そして、そもそも剣に殺傷能力がある場合」

「そんな!そんなのっ、思いっきり不正……」

「相手が誰だかお忘れですか?貴族ですよ。それも飛びっきり性、悪、の。金はあるんです。相手は鍛錬ホリックの騎士団長。普通にやって勝てるはずがないのはわかってるんですから、初めからまともにやる気ないと思いますよ」