「殿下とルウは一体どういう関係なのか聞いてもいい?」

この数日間で打ち解けてきたルウリエに尋ねる。フェリチタの顔が向いていないことに気づいたレイオウルが誰にも気づかれないくらい密かにむくれた。

「私は正式に侍女になる前、つまり見習いだった頃、レイオウル様のお世話係もさせていただいていたのです。ですから幼少期の殿下のエピソードも色々と知っていますよ?」

「お願いだから話すのとかやめてよ、ルウリエ」

「…………ええ、もちろん」

長い沈黙に、フェリチタもレイオウルも、これはきっと遠からず全部喋るだろうなと同じ事を思った。

「だからルウには頭が上がらないんだね」

フェリチタの言葉にルウリエがくすっと笑いをこぼした。

「そうなのかもしれませんね。ですが、記憶にあやふやな所がありまして……残念です。今では可愛げがなくなってしまった殿下の貴重な思い出なのに……やっぱり歳なんでしょうか」

そんな風に思ってたのか、というレイオウルの呟きは2人とも拾わなかった。

暫くお茶を飲んでからレイオウルが懐中時計を見て立ち上がる。

「そろそろ時間だ。……夕食も一緒にしてくれると嬉しいんだけど……やっぱり今日も駄目?」

「この時間だけではコミュニケーションを取るのに不十分ですか?1日の最後の食事を落ち着いて食べたいのでご遠慮します。ご命令と言うなら勿論従いますが」

目を逸らしながらもごもごと言う王子殿下にフェリチタは真顔で滑らかに答える。彼は毎度の事ながらため息をついた。

「命令なんてする訳がない。お前が望まないなら強要はしないよ」