□□

横たわる自分の身体を包み込む、ふわふわの感触。すり、とほほを擦り付けると想像よりずっと滑らかで驚いた。どこまでも沈み込んでいきそうな、至福の感覚。一体どんな高級素材が使われているんだろう──

いや待て、自分は今、何処にいる?

そこまで考え至って、フェリチタは飛び起きた。


「──うにゅっ!」

「うぐっ」

ごちんと酷く鈍い音がした。何かにぶつかって揺れる脳髄。予想だにしない出来事に思わず奇声を上げたフェリチタは跳ね返ってまた寝台に後頭部から飛び込んだ。まだ光に慣れない滲む視界に、ちかちかと星が舞う。

額を左手で撫でていたが、はたとフェリチタは動きを止めた。

(『うぐっ』?)

今度こそはっきりと目を開ける。大きく開かれた青い瞳に映ったのは、あの人形のような美しい顔をした青年。

フェリチタの横たわる寝台の横の椅子に腰掛け額を押さえている。フェリチタの視線に気がつくと、何事も無かったかのようにゆっくりと手を下ろした。

出会った時の印象のままであまり表情はみえないけれど、無表情ながら僅かに目の端に涙が滲んでいる。人間の反射だから仕方ない。

どうやら、この青年──名はレイオウルと言ったか。起き上がった拍子に彼に派手にぶつかってしまったらしい。

状況が掴めず混乱していたが、敵対していると思われては大変だと思ったフェリチタは慌てて姿勢を正すと頭を下げた。

「あ、ごめん、なさい……別に頭突きで攻撃をしようと思ったわけじゃなくて……」

「いや、分かってる。こちらこそ……すまない」

レイオウルは視線を伏せた。さらりと揺れる金髪の間から覗いた耳がほんのりと赤く染まっている。