美しい、いや──美しいという言葉で表すのは、余りにも烏滸(おこ)がましい。

陽に透ける金の髪は、まるで昇り始めたばかりの朝日のような、繊細なとろりとした魅惑的な色をしていて、触れてみたい、できることなら指で梳いてみたい、と……そこまで考えて、フェリチタは目を見開いたまま動けなくなる。

目が合っている気がして、自分が本当にヴェールをしているのかと不安になる。こちらを見据える琥珀色の瞳は鋭いのに、その奥にちかりと光るものが見えた気がして、それが何なのかと思わず見つめた時には、息をするのも忘れていた。

琥珀を縁取る長い睫毛、すっと通った高い鼻、美しく弧を描く眉。表情があまり変わらないことも相まって、まるで人形のよう。

(綺麗過ぎて、生き物じゃないみたい……)

それがフェリチタの精一杯の感想だった。

ヤーノも同じような事を思ったのだろう、2人して惚(ほう)けたように腕を下げていたのに、何故か人間たちは襲ってこない。

「ひとつ聞く。そこの女、お前は何者だ?」

先に聞こえた号令の、良く通る声。どうやら金髪の美青年は地位の高い人物のようだ。

口を開く前に、ヤーノがフェリチタを庇うように前に出た。

「我ら森人の、戦の聖女だ」

そうか、と青年は自分が尋ねたくせにあまり気にした様子を見せず頷く。

「その者と共に捕虜になるか、ここで地に伏すか選べ」

その言葉に応えることなく、ヤーノは素早く腕を振った。

刹那、青年の左頬から、ぴっとほんの僅かだけ飛び散る赤。ピックを投げたのだ。しかし彼は感情を荒らげることもなく、指先で無造作に拭った。