「よ、フェリ。良かったよ会ってくれて。ルウリエっていう侍女に頼んでみたんだけど、胡散臭そうな目で見られたから駄目かと思った」

首を竦める森人の青年にフェリチタは緩慢な動作で頷いた。

「うん、会わせるのあんまり気が進んでないみたいだったよ」

「そうか……」

ヤーノはフェリチタの瞳を覗き込んだ。急激にすうっと目つきが鋭く冷たくなる。

そして温度の無い表情で唐突に、こう訊ねた。


「真実を知らずに死んだように生きるのと、真実を知って絶望するのと、どっちがいい?」

「……え?」

何と言われたのか、頭に入ってこない。呆然とするフェリチタに、ヤーノは言葉を重ねる。

「ずっと訊こうと思ってた。まさかこんなギリギリ前日になるとは思ってなかったけどなあ」

「ちょ、っと待ってよ……何の話?」

「本当はわかってるんじゃないのか?」

射抜くような黄色い瞳に、フェリチタは心臓がぎちぎちと変な音を立てるのを感じた。彼の話を聞けば、きっと何かが『変わる』。それも、決定的に。そう感じさせる真っ直ぐ過ぎる目で。

無意識に顔を背けようとしたフェリチタにヤーノが手を伸ばす。そして──無造作にフェリチタの獣耳を“取り上げた”。

「──!?」

フェリチタは信じられない面持ちでヤーノを見つめる。偽りの耳が無くなった頭に手をやる。唇が震えるばかりで何も言葉が出てこない。

(なんでヤーノが私の耳が本物じゃないことを知ってるのっ!?)

「俺は、お前の真実を知っている。お前が“忘れている”真実を」

フェリチタは理由もわからず激しい焦燥に駆られて捲し立てた。