「とりあえず飲みましょうか」

「ええ」


ビールを口に入れ一息つく。

やっぱり男を口説くのはくそも面白くねぇな。なんで俺が男を褒めなきゃならねぇんだよ。無駄に疲れるわ。


……早く帰りてぇな。って、帰っても華乃はいないのか。


……つまんねぇ。こんな仕事さっさと終わらせてやる。


「電話でも軽くお話させていただきましたが、現在五十嵐さんが働いている会社ではインセンティブの手数料率が20%ですよね?当社にお越し下さいますと、手数料率30%プラスボーナスも1,5倍、お望みでしたらマネージャースタートもできる環境をお作りします」


って、親父が言っていたような。丸暗記だから間違ってたら最悪だな。


「すごいですね、神田グループ内でそのような待遇をしていただけるなんて」

「五十嵐さんが当社に来ていただけるならこれくらい…」

「ていうか、あんたあの神田龍成だろ?」

「……はい?」


こいつ、なんて言った?


「名刺見て確信したよ。まさか神田龍成が俺にヘッドハンティングするなんてな」