碧羽の身支度を、うれしそうに手伝う凜。

 もちろん着替えのときは退室していたが、今日着る洋服などの一揃えのコーディネートは、彼が嬉々として請け負ったのである。

 着替え終えたと部屋越しから碧羽の声がかかったと同時に、ソワソワと廊下で待機していた凜は、部屋へと飛び込んだ。

 一方その頃、漸は一階のリビングでひとり大人しく、ソファへと腰掛けていた。

 けれどさすがにしびれを切らした漸は、様子を窺いに二階へと上がる。開かれたドアをノックしながら、部屋へと入って碧羽へと声をかけた。

「よう、仕度は済んだのか? じゃあ行こうぜ――……って、おまえ何やってんだよ」

「なにって? 碧羽のお手伝い」

「あ゛!? 馬鹿かおまえ。女の着替え手伝ってんな!! つか、碧羽もなにナチュラルに手伝わせてんだよ」

「お洋服はひとりで着替えたよ? 凛はそのあとに手伝ってくれてたんだよ」

「そういうこと。早とちりの、あわてんぼうさん」

 首を傾げながら碧羽が「どうして怒っているの?」という顔をしている。

 その横で、凜が漸の神経を逆なでるポージングを取りながら、「お・バ・カ・さ・ん♪」と声に出さずに口ずさむ。