『碧羽ちゃん、また男子に色目使ったんだってー! ちょっと可愛いからって、調子にノリすぎなんじゃない?』

『男子もバカだよね。あの子なんか、ただちょっと顔がイイだけで、なんの取り得もないのにさ』

『知ってる? 碧羽ちゃんのお父さん、家に帰って来ないんだって。それで、お母さん死んじゃったんだって』

『え~何ソレ~。誰から聞いたの~?』
 

『三組の子が話してるのを、聞いたって子がいたらしくてさ――……』




(勝手なことばかり言わないでよ……もう、わたしのことは放っておいて……)


――いつもの天井だ

 また、この夢みてたんだ……最近は見てなかったんだけどな。

 耳鳴りがしてきそうなほど静まり返った部屋。

 ベッドで寝返りをうつ度にあがる、シーツの衣擦れの音だけが、やけに部屋に木霊する。

 夜の帳にひとり、カーテンの隙間から零れる月明かりだけが、無味なる心に灯をともしてくれると錯覚をする。

 もう何年になるのだろう。この広い家でひとり、孤独を感じることなく生活するようになったのは……

 泪に濡れた瞳で、碧羽は見慣れた天井を見上げる。