よく晴れた、とある休日、とある午後。食欲の秋に読書の秋、芸術の秋もあれば睡眠の秋という奴もいる。

 だが今回は、すべからくすべての秋を凌駕する、浮かれきった恋愛体質少年がプロデュースする、恋愛の秋が持論の椿木 凛が主役のおはなしである。


「碧羽~用意できた~?」

「うん。いま着替え終わったとこ。ごめんね、待たせちゃって」

 澄んだ水の音のような愛らしい声とともに、ドアが開かれ碧羽がすがたを現す。

「ううん、気にしないで。女の子は身支度に時間がかかるのは当然だよ。うん、碧羽すごくかわいい♪ ふふふ、その服よく似合ってる」

「えへへ、そうかな。ありがとう、凜。こんな可愛いお洋服プレゼントしてくれて」

「うん♪ 僕の夢だったんだ、碧羽に服をプレゼントするの。それで、その服を着て僕とデートしてくれるって夢。ふふふ、もう夢がひとつ叶っちゃった♪」

 相変わらずクサい奴である。

 ほんとうは下着を贈るつもりであったが、此れには全面的に漸に阻止される。

 今日のふたりだけのデートですら、最大級の譲歩であったのだ。そんな破廉恥なことを漸が許すはずがない。

「他にもあるの? わたしが叶えてあげられる夢だったら、協力するよ?」

「!ッ―――碧羽から、その言葉が聞けただけで、僕の夢がまたひとつ叶っちゃったよ♪ じゃあ、その時がきたら協力をお願いするよ」

 「うん、まかせて」