「なんだよ、それ……どんなオチだよ。つか……マジ有り得ねえ」

 衝撃の真実を目の当たりにして、漸は凜のふところより這う這うの体で脱出を試みる。

「なにしてんの? 僕からは逃げられないよ? 漸……往生際がわるいよ?」

「『?』の三段活用してんじゃねえッ! つか脚ひろげんな。ちょ、おい――うわッ!」

「碧羽~? 漸の捕獲完了~♪ つぎはどうしたらいい?」

 凜は漸の脚を容赦なく掴みあげ、事も無げに両サイドへと広げた。凜が漸を見下ろして冷笑する。

 そんな凜を見上げながら、漸は目のまえの悪魔を心のなかで存分に罵倒した。……彼の双眸から悔し涙が滲む。

「ん~とねえ。じゃあね……凜は漸の股のあいだに陣取って、密着してくれる? でね、こう言うの――『もう離れない』って。あーキュンとくる~♪ あ、そうだ。離れないってのは、下半身の密着部分が離れな――」

「ストーップ!!」

 碧羽がみなまで言い切るまえに、漸がすべからくそれを制する。

「わかったから。さいごまで言わなくていいから、ね」

 『ヤバいヤバい、ふぅ。なんてことを言いだすのだ、この子は』――凜の頭のなかで警鐘が鳴り響く。

 すでに漸は、男の大切な何かを凜に奪われ、過ぎし日が走馬灯のように蘇っていた。