秋も深まる秋冷の候。

 馬は肥え、葉が色づく砌、鈴虫や松虫とともに蠢き、忍びやかに暗躍する影がふたつ――

「ねえ、漸(ぜん)。碧羽なにしてるかな? 最近『アノ』ラブリーな姿見ないよねえ」

「おまえな……自分から『アノ』とんでもねー格好させといて、それはねえんじゃねーの?」

「だってさ……可愛いじゃん! 実際さ、ヤバいよ? あのメガネ!……プフッ」

「(確信犯だな……)あいつは今日も部屋にこもって、漫画読んでんじゃねーの?」

「ああ……BL? しっかしさ~碧羽が『腐』にいっちゃうなんて、予定外だったよねえ」

「俺もはじめ、あの大量に積まれた本の山がすべて、腐関連だったことには、まじでビビったぞ」

「ふふふ。案外さ、碧羽ったら僕たちを妄想材料なんかにしてそうじゃない? 兄弟萌え~とか言っちゃってさ」

「冗談でもヤめろ! 耳が腐る。てか双子萌えだろ? ――って、んなこた、どーでもいいんだよ! 話脱線させんじゃねえよ」

「(さいご自分で脱線させたんじゃん……)で、なんだっけ? ああ、そうそう、碧羽のことだ。ソロソロ姫のカワイー顔みたいよねえ♪ 身体ごとホシーよねえ♪」

「てめーはいちいち卑猥なんだよ、言うことが! 俺の碧羽を穢すんじゃねえ!!」

「わッ! 俺の? 俺の?? 漸だけのモノじゃないんだからねえ。ひとり占め反対」

「わーってるって! うっせーな。ひとりはふたりを、ふたりはひとりを分かち合うんだろ? 俺らが取り決めた結束だ、俺が裏切る訳ねえだろ」

「ふふふ、いい子いい子♪ じゃあ、ソロソロ解禁ってことでいーよね?」

「ああ。俺もそろそろ限界だ」




 ふたりの下世話な暗躍者どもは、なにか画策しているようだが、はたして……

「「だれが下世話な暗躍者だ!!」」