子供ひとりにさせる訳にはいかないと、父の職場のスタッフたちが気を利かせ、足繁く通ってきてくれた。

 ハウスキーパーも雇われ、父は月に数度顔を見せるだけになった。

 不倫相手とは、その後どうなったのか知る由もないが、碧羽にとっては、それこそどうでもいいことだ。

 どうなろうと知ったことではないが―――

 愛人に、この家の敷居を跨がせることだけは、何があっても許さないと……碧羽が父に対して返した言葉は、そのひとつだけであった。

 * * *

 双子からのコンタクトが無くなってから、もう何年になるだろう。

 碧羽は、美少女から残念な子にビフォーアフターを遂げ、高等部へと進学したのを機に、今度は腐女子の道へと転向した。

 ある意味では中学デビュー・高校デビューを果たした碧羽ではあるが、その方向性は前進ではなく後退の一途を辿っているなどとは、まったく気づかない碧羽であった――