安藤はそう言うと、両手でドーナツを握りしめるhacchi嬢の許へと、走って行くのであった。

「ふふふ、そのドレスの汚れってチョコレートだよね。碧羽は桂花のことが大好きなんだ。仲の良い友達が出来て僕も嬉しいよ♪」

 凛は女友達を庇う碧羽が眩しくて、そして少しだけ寂しくもあった。これまで碧羽は、双子にしか心をひらくことが無かった。

 結果として、碧羽を孤独に慣れさせてしまったのは、他でもない双子の行動がきっかけではあるが。

 それでも自分たち以外に心をひらける相手が出来たことに、凛は安堵を覚えた。

 これからは変わっていける。碧羽はひとりじゃないのだから。それは愉快な仲間たちが、彼女の周りには溢れているということだ。

 凛は想う……碧羽の着替えを覗きたいと――

「あ~~~もう! だから、なんでいい雰囲気でフィナーレ飾れない訳? そんなオチとか要らないんだって」

 凛が怒る。素直な心の内を吐露しただけなのに。

 安藤はhacchi嬢からドーナツを奪い取っていた。だがしかし、まだ口に銜えている分が残っていると、口からドーナツ奪回するためジリジリと彼女を追い詰めている。

「ウワい取れるナラ、ウワい取ってミナふぁい」

「まあ、小憎たらしいんだから! わたしはあなたのことを思って――って、コラ待ちなさい」