「うん、なあに?」

 にこにこと、凛はとっても嬉しそうだ。碧羽とはなしをしているだけで、彼の浮かれたテンションは羽を広げて一層高まるのだ。

「あのね、わたし凛のことが――」

「ああ――ッ! ちょっと碧羽ちゃん、いったいその背中どうしたのよ!?」

「背中?……あ」

 碧羽の決死の告白は、安藤の悲痛なる喚声(かんせい)によって幕を閉じた。

 それから背中についているだろう、ドーナツのチョコ汚れを思い出した碧羽は、みるみる顔が青くなる。

「背中? 碧羽の背中に何か……あらら、すっごい汚れてるね。どうしたの、これ?」

 凛が碧羽の背中を見ながら、「どうしたらこんなに汚せるの」と、感心するかのように尋ねる。

 これは自分でやったんじゃないんだと、無実を証明したいがそれではhacchi嬢が咎められてしまう。

 こうなれば素直に謝ってしまおうと、碧羽は覚悟を決める。

「安藤さん、ごめんなさい。撮影で使う衣装なのに汚してしまって」

「もう~~~次から次へと問題が山積みねえ。まあいいわ、スタイリストのところに行って、別のに着替えてらっしゃい。わたしはちょっと、ハッチンの暴走を止めてくるわ」