「桂花ちゃん、わたし……わたしも凛が好きみたい。わたし負けないよ、桂花ちゃんは大好きだけど……でも桂花ちゃんを倒して、凛のとなりはわたしがぜったい守り抜くッ!」
只今の碧羽が愛読するBL嗜好は、なんと仲間内がすべてゲイで蔓延してるという『BL戦隊LOVEレンジャー』。
様々な敵を、ゲイの愛を以って倒してゆくという、なんともシニカルな戦隊ものBLなのだ。
しかも倒された敵は、改心をしてゲイに成り下がるという、オチまであるようだ。
しかも笑えることに、作者はこれまた『蒼生 ちはや』で、世も末ならば重版をくり返しているといった有り様だ。
これには碧羽も悶えハマり、戦隊用語を多用する厨二発言を発令していた。
碧羽は不朽の名作『風と共に去りぬ』の主人公スカーレット・オハラよろしく、武骨な踊り場へと立ちつくして拳をつくり、「Tomorrow is another day!(明日は明日の風が吹く)」と力づよく宣言した。
最後までシリアスがつづかないという、なんとも遺憾且つ口惜しいフィナーレではあるが、更に転がる石はオチを絡めとりながらはなしは進む。
「碧羽遅かったじゃない、僕心配したんだよ? どこに行ってたの」
「……ごめんね、凛に心配させちゃって。ちょっと非常階段で、桂花ちゃんとお喋りしてたの。そういえば漸は?」
「ああ、今向こうで桂花に捉まって、一緒にドーナツ食べてるよ。僕たちも食べようか」
「ううん、今は要らない。それよりね、わたし……凛に伝えたいことがあるの」

