「なんだ、安藤さんか。脅かさないでよ……」
「なんだじゃないわよ、まったく。みんなもうスタンバッてんだから、早く現場に戻ってちょうだい。時間押してんのよ? 過ぎた時間は戻って来ないの、時は金なり! プロの自覚なさい」
hacchi嬢は、『やれやれ、アンディーのお小言がはじまった』と言わんばかりに、シュラグをしながら碧羽に目配せする。
それを察した碧羽は、固唾を呑んで覚悟を決めた。
「みんな其々忙しいのよ? 写カメだってスタイリストだって、あんたたちの世話だけしてりゃいい訳じゃないの、他にも仕事抱えてんだから」
終わったのか? 碧羽とhacchi嬢はほっと息をついた。やれやれ、これで――
「いいこと? ふたりとも。遊びじゃないんだから、もっと身を引き締めてくれなきゃ困るわ。ああハッチンは年契まだ切れてないから、大人しく端っこにでも座って見てなさい。セロリでも齧りながらね」
終わったかと思えば、まだつづくとは――碧羽とhacchi嬢は、顔を見合わせ渋面をつくる。
安藤は「ドーナツはダメよ、モデルの敵!」などと、まるでhacchi嬢のヤケ喰い風景を見て来たかのよう彼女に忠告し、はやく来いと言わんばかりに『こっちさ来い』のジェスチャーする。

