「あの女にどんな素敵すぎる噂が流れていても、そんなのまったくのデマよ! 顔だって並にチヂレっ毛が生えた程度のクセして、エグいったら無いんだから。しかも腹グロ。hacchiショック!」
よっぽど腹に据えかねていたのか、hacchi嬢は地団駄を踏みながら、思いつく限りに有栖川を罵った。
碧羽は『ストレスが溜まってるのかな、仕事も忙しそうだし』などと、斜め上をゆく同情をして、彼女の肩にそっと手を載せ生温かい笑みを向けてやる。
「桂花ちゃん……ファイトだよ!」
「え? なに、急に。なんだかその菩薩じみた笑顔は……曲者って気がする。なにか勘違いしてな――」
「んも~~~うッ! やっと見つけたわ。あんたたち外に出るったって、どこの外かくらい言ってから行動してちょうだい。おかげでわたしが駆り出されて、ビル中探す羽目になったじゃない」
hacchi嬢の科白を遮って現れたのは、アンディーことオネエだ。
「違うわよッ!! 安藤よ」
彼は碧羽たちを探して、『外』に該当する場所を虱潰(しらみつぶ)しに当たっていたそうだ。
オネエではあるが、その顔立ちは甘く精悍で、額に輝く努力の汗が一段と魅力を増すかのようだ。

