バスを待っていたあの冬。
翔くんがわたしに言ってくれた言葉を思い出した。
「…はっくしゅん!」
隣で翔くんが大きなくしゃみをした。
雨で体が冷えたのだろうか。
「…翔くん大丈夫?
雨止みそうにないし、わたしの家で少し休んで帰っていいよ?あったかい飲み物飲んで…」
彼氏がいるのに
男の人を家にあげるなんて…ましてや元彼。
普通なら何言ってんのと思う。
あの優しい蒼くんですらこのこと聞いたら怒るだろう。
もちろん明菜だって。
傘を貸せばいいのに、くしゃみをする翔くんが心配になったのだ。
「ごめん、ありがと…」
翔くんを家にあげる。
大切な友達だから…そう自分に言い聞かせる。
タオルを翔くんに貸す。
そしてリビングに案内してコーヒーを淹れる。
