「……昨日、徹とあの女の子が一緒にいるところ見ちゃった」


私は俯いてそう零していた。


「あの女の子って……。ああ、徹君と同じ大学のあの子? 大学に会いに行った時に近くにいた子」


私は頷いた。


「一緒にって、それはたまたまなんじゃないの? 大学の同級生なんだからそういうこともあるでしょ。深い意味なんてあるわけないよ」

「でも、そのことを私に隠した……」


それがショックだった。
徹に隠されたことが何より。


「……え? でも、徹君に限って文子を裏切るようなことなんてないよ」


顔を上げない私の肩に優しく触れてくれた。
それが今はとてもありがたい。


「分かってるの。そんなこと分かってるんだけど。不安で怖くて。由紀ちゃんの言葉が今の私にはキツかった。あの子がどうしても徹を手に入れたいって思ったら、私にそれを止める術なんてないもん」


「文子……」


信じるしかないことも分かってる。
信じるって、どうしてこんなに大変なんだろう。


「二人並んで歩く姿がすごくお似合いで。少しずつ少しずつ距離を縮めて、毎日一緒にいて……。考えれば考えるほどに不安で、こんなことばかり考える自分が嫌になる」

「だったら、ちゃんとその気持ちを徹君に言いなよ。二人を見たって。どうして隠したりするのって。そのことは言わないで徹君の気持ちを試そうなんて、やっぱりそのやり方は間違ってると思うよ」


優しく、でもきっぱりと私を見つめて来た。