だからこそ、その服に手を掛けることだけはしなかった。

感情の昂ぶりのまま、服の上から身体を沿わせていた手が文子の胸にたどり着こうとしたところで、俺の欲情を押し止めた。

これ以上触れてしまったら、絶対に止まれない。
突然押し入るように家に上がり込んで抱くようなことはしたくなかった。


本当はこのまま抱いてしまいたいのを、感情のままに触れてしまいたいのを懸命に押し止め、今の今まで身体を這わせていた手を文子の頬へとやった。


「文子、ごめん。ちょっと暴走し過ぎた……」


その頬を優しく包み込む。
そして、その身体を抱き起こし俺の腕に閉じ込めた。


「今日一日ずっと触れたいのを我慢してたから、つい……。許してくれ」


腕の中の文子の顔を見下ろすと、俺を優しく見つめ返してくれた。


「……いつもとちょっと違うから、びっくりしてあたふたしちゃったけど。でも、少しだけ嬉しかった……です」


そんなことを言ってしまって自分でも恥ずかしくなったのか、俺の胸に顔を埋めて来た。


「……そんなこと言われたら、我慢できなくなるの分かって言ってる?」

「そ、そんなつもりは」


慌てる文子の額にそっとキスを落とす。