「それ、多分、手順が違ってると思う。最初に戻ってやった方が早い。まだ時間はあるから、落ち着いて」


隣に座っていた河野君がそう声を掛けてくれた。

その時、河野君が神様に見えた。

いつもどこか近寄りがたかった。
でも、本当はとっても面倒見のいい、困っている人を放っておけないタイプだと分かった。

それからは、同じ班ということもあって皆でなんとなく一緒にいる機会も多くて。
気付けば河野君を目で追ってた。

学年は一緒だから同級生だけど、彼は一浪しているのだと聞いて、だから少しお兄さんぽく見えるのかななんて思ったりした。

大学に来れば、ほぼ毎日彼に会える。
仲良く話すっていうのにはほど遠かったけど、こちらから話し掛ければ答えてもらえるしそれだけで十分楽しかった。

それは、恋と呼ぶにはまだ未成熟な感情だった。