まどろんでいた目をそっと開ける。

背中に感じる河野の重み。

横向きに寝ていた私の頭の下には河野の腕がある。
そしてもう片方の腕とで私を後ろから抱きしめている形になっていた。


起きてるのかな。寝てるのかな……。


それが分からなくて、そっと頭をひねってみる。
そうしたら、眼鏡越しではない河野の目とばっちり合ってしまった。


――もしかして、ずっと起きてた?


「……あ、えっと、その、どうも」


至近距離に見るその裸眼に、私はまだ慣れない。
それに、さっきまでしていたことを思い出してなんだか気恥ずかしさもあり、また変な敬語になってしまった。


「おまえ、緊張すると、すぐ敬語になるのな」


くすっと笑うその表情も、考えられないほどに甘い。
眼鏡をかけていない目で、そんな表情をされたら、その破壊力たるや半端ない。
それに、視力が悪いからなのか、眼鏡を外して私を見る時、いつもよりじっと見つめられる気がする。


「緊張とか、そういうわけではなくて――」


言いかけているのにすぐさま私をぎゅっと河野の胸の方に引き寄せて、私の肩に顔を埋める。


「ホント、そういうとこ昔から変わってないな。そこがおまえの可愛いとこでもあるけど」

「ちょ、ちょっと――」


え――?
な、なんですか? この人本当に河野ですか?


「なに?」


一人バクバクしている私をよそに今度は私の背中に口付けを落としてくる。


「ひやっ。な、どうしたの?」

「だから、何が」

「だって、徹、全然……」


違う人になってる……。


恥ずかしくて続きを言葉にすることが出来なかった。