「別に、泣いてないから……」


無駄だと分かっていても、知られたくなかった。


本当に心の底からお祝いをしたい気持ちだった。
それだけで良かった。

でも、私のこんな情けない思いを知られたら、それすらも嘘になってしまいそうで。


「泣いてるだろ? どうした?」


不安に満ちた目をした河野の手が私に伸びる。
でも、気付くとそれを思いっきり振り払っていた。


「本当に、何でもない!」


河野には知られたくない。
本当は今日、もっと河野に近付きたかったなんて、本当は今日、河野のものになりたかったなんて死んでも気付かれたくない。

河野に軽蔑されたくない。


――女の私が、こんなにも河野に触れたいと思うのはおかしなことですか?
――好きな人ともっと深くつながりたいと望むことは恥ずかしいことですか?


こんなことを考えてしまう私は、やっぱりおかしいのだ。