一人取り残された玄関で、私は途端にしゃがみ込む。


みなさん教えてください。
女の私が、こんなにも河野に触れたいと思うのはおかしなことですか？
好きな人ともっと深くつながりたいと望むことは恥ずかしいことですか？


本当は、今日は、もしかしたら――って思ってた。
期待しないってあんなに言い聞かせてたのに、結局これほどまでに期待していたことに気付かされる。
この溢れて来る涙と切なさがその証拠だ。

過去のことから臆病になって。
河野に誤解されるのが怖くて。
触れたいと思う気持ちも表せない。


私ばかりがこんなことを望んでいるようで惨めになる。


河野は、私のこと「抱きたい」と思わないのかな。
そういう気になれないのかな。


河野がどれだけ私を想ってくれているか心底分かっているくせに、卑屈になる自分が嫌。

止まらない涙に困惑する。

今日は、私にとって最高に嬉しい日だったのに。

どうして私は泣いてるんだろう。

自分が分からない。


誰もいない玄関で泣きじゃくる自分が分からなくて、余計混乱する。
自分の気持ちに戸惑って、そこから動けない。


その時、耳にインターホンの音が届く。

それにびくっとすると、目の前のドアが勝手に開いた。


「やっぱり……」

「徹……？」


驚きのあまり泣いているのも忘れて顔を上げてしまった。


「おまえ、泣いてるんじゃないかと思った」


そう言うと、河野が私の前にしゃがみ込んだ。