片づけを終えた後、紅茶と河野が持ってきてくれたチョコレートを持って私の部屋へと移動した。


「チョコレートって言えばさ、高校の時、河野がお弁当のお礼だって言って私にくれたよね」


部屋の真ん中にあるローテーブルの傍に腰を下ろす。
正方形のテーブルの、河野の斜め隣に私は座った。

テーブルに置いたチョコレートの箱から一つ取り出し、それを眺める。


「ああ、そうだった。あれも相当カッコ悪かったよな。もうおまえが弁当作らないってことになってたのに、『これからも楽しみにしてる』なんて書いたカード渡してさ」


河野が、すぐ後ろにある私のベッドにもたれて言った。


「でも、あのカード、凄く嬉しくて、定期入れにずっと入れてた」

「……。知らなかったな」


河野が少し照れたように俯き、腕組みをした。


「あの時はもう既に徹のこと好きで仕方なかった時だし、ね……」


そう言い終えて、えへへと誤魔化すように取って付けた笑い声を足してみたけど、少し二人きりの部屋の温度が上がったような気がした。


すぐ近くに河野がいる。
この三か月会いたくて会いたくて仕方がなかった河野がいる。


触れたいと思うのは、おかしなことですか?
ぎゅうっと抱きしめてほしいと思うのは、よこしまなことですか?


勝手に胸が締め付けられた。


「それも、気付かなかった」


今度は優しげな目で私を見つめてくれた。それは、とても穏やかな表情。
一人緊張してしまった私をよそに、河野はいたって普通にそう答えた。