「来てくれたから、もういいよ。一緒に渉君の結婚式に出られて良かった」


吐息と一緒にそう零した。
そして、徹の胸に頬を寄せた。


「泣いているおまえを見て、ちょっと複雑な心境になった。俺と渉は長いことライバルだったからな」


くすっと笑う徹を不思議に思って顔を上げた。
そこには甘く優しい表情をした徹の顔があった。


「ライバル……? なんのこと?」


きょとんとしてしまう私に顔を近付けて来て、徹が囁く。


「こっちの話。文子は俺だけのものって話だよ」


徹の手のひらが優しく私の頬を包み込む。
今にも徹の唇が私の唇に触れそうだったのにすっとそれて私の瞼に落とされた。

そしていくつものキスが降り注ぐ。

それがもどかしくて、身体の奥底からぎゅっと甘く締め付けられる。


「……徹」


自分の声が甘く擦れてしまっていることに恥ずかしくなるけれど、それ以上に襲って来る心地よさに委ねたくなってしまう。

そしてやっと待っていた場所に徹の唇が落ちて来た。
唇を塞がれながら私は徹の身体にしがみつく。
次第に深くなる口付けが私を疼かせて、身体を捩った。


「……そんなに可愛い仕草見せられたら、優しくしてやれなくなる」


そんなことを言いながらも私の身体を這う手は激しくても優しい。
私を抱く手は、その腕は、いつだって優しくて。
愛されてるということを嫌っていうほどに実感させてくれる。

慈しむように私を見つめる徹の目には、いつの間にか眼鏡がなくなっていた。
その目を見ると、今でもドキドキと胸の鼓動が激しくなる。

私を見つめるその目は甘く切なげに揺れていて。


「文子、愛してる……。この気持ちは日に日に大きくなるよ」

「私も。私もだよ――」


――愛してる。


「ずっと、俺の傍にいて――」


この先もずっと徹の傍にいさせてね。
あなたといられる私が、一番幸せなの――。




【完結】