「悪かった」
そう言って徹が走って来た時は、チャペルでの式がもうすぐ始まるというところだった。
「パパ!」
「ごめんな、一緒に来られなくて。でも、もう戻って来たからな」
私が声を出す前に子どもたちが満面の笑みで徹にしがみつく。
そんな子供たちに、徹はすぐに表情を崩して抱きとめていた。
「徹! もう、間に合わないんじゃないかって気が気じゃなかったわよ」
そしてお母さんからのお咎めの言葉。
「悪かったって。でも、なんとか間に合ってよかった」
「そうだぞ。仕事なんだからしょうがないじゃないか。ほらほらみんなちゃんと自分の席に」
お父さんの言葉に皆が声を静めた。
「迷惑かけた。ごめん」
徹が私にそっと耳打ちした。
「患者さん大丈夫だった?」
「ああ、大丈夫だ」
その言葉に安堵する。
そして、渉君の式が始まった。



