素直の向こうがわ【after story】



走って徹の病室まで戻って来た。

徹のベッドのところはカーテンが閉められたままだった。


周囲を見回すと、他にある三つのベッドに患者さんの姿はない。


息を整えるため、もう一度自分を奮い立たせるため深呼吸をする。


閉じたカーテンの前に立つ。


「徹、いる?」


少し声が震えてしまった。


「文子……?」


少しの間の後、徹の声と身体を動かしたのか衣擦れの音がした。


「……ごめんね、一人にしてくれって言われたのに戻って来て。でも、やっぱり私の気持ちをちゃんと聞いてもらわないとって思って。そのままでいいから。そこにいてくれればいい。私もここから話すから。私の気持ち聞いてほしい」


クリーム色のカーテンのひだをひたすらに見つめる。
何から話せばいいかと気ばかりが焦るけれど、とりあえず言葉にしたい。
上手く伝えられなくても、気持ちだけは伝わってほしい。
そう強く思う。