「この先の人生俺といることを望んでいないのかもって思うと、これからどうするべきなのか考えると怖くなる。『待ってる』なんていい男ぶってみたところで、待ったところで何か変わるのかとか。文子の気持ちを一番に考えてやりたいのに、ホント、どうしようもない。仕事も女のことも全部、俺の思い上がりばっかりだった」
徹が仕事のことで自信をなくしていたのを知っていたのに。
私にその弱い部分も見せてくれたのに。
それなのに、私のことまでも落ち込ませたのだ。
「別に、思い上がってたっていいだろ。思い上がった分まで押し上げるのがおまえなんだから。仕事だってそうだ。おまえは自分の設定した高い目標に自分を引き上げて行く奴だからな。文子さんのことも同じようにすればいいだろう?」
「……そうだな」
徹の消えそうなほどに小さい声が、私の胸を締め付ける。
違うよ。違う――。
何かを考える前に私は心の中で叫んでいた。
「じゃあ、まあ、久々に与えられた何もしなくていい時間だ。嫌って程考えとけよ」
椅子から立ち上がるのが分かって、私は慌てて後ずさった。
「あ、あれ? 文子さん? 久しぶり」
「ど、どうも。今、ちょうど様子見に来たところで……」
カーテンが開けられるのと同時に掛けられた声に、なんとか言葉を返すことが出来た。
「そうなんだ。じゃあ、ごゆっくりどうぞ」
一瞬驚いた顔を見せた後、すぐに私に微笑みかけて徹の友人は病室を出て行った。
「……文子、今日は仕事早かったんだな」
酷く強張った表情を隠せないままの徹の顔。
そんな徹の顔が、私の心を苦しくさせた。



