素直の向こうがわ【after story】



ちょうどドアから出て来た医師を捕まえた。


「あの、すみません。河野の知り合いの者ですが、彼が怪我をしたと聞いたのですが」


見たところ、20代後半くらいの若手医師のようだ。私とは面識のない先生だった。


「ああ、ちょっと階段から落ちてね。今処置が終わって病棟の方にいますよ。病室、お教えしましょうか?」


私の緊張と悲壮感とは裏腹に、その医師は穏やかな口調でそう言った。


「はい、お願いします。今、行ってみても大丈夫でしょうか」


勢い込んでこんなところまで来てみたものの、少し不安になった。


「どうせ休んでいるだけですし、構わないと思いますよ」


何でもないことのようにそう告げると、病室も教えてくれた。


「ありがとうございます」


私は深々と頭を下げて、告げられた病室に向かい急いだ。