素直の向こうがわ【after story】



今回は、見た目よりも栄養面に特に気をつかったメニューにした。
不規則な上に食事の時間さえままならない徹の生活が、心配だった。


「ホント、生き返る気分。ありがとな。最近、ろくなもの食べてなかったんだ」


徹がしみじみと呟き、私を見つめた。
その表情はいくら笑顔でも、疲労を隠し切れていない。


「心配だよ。いくら若いからって食事くらいは気を遣って」

「さすが、栄養士だな」


徹が笑う。
私の目の前には、私の料理を美味しいと言って食べてくれる徹がいる。

こんな穏やかな時間に、こちらも癒される。




「今日は、ほんとにありがと」


食事を終えて、徹が改めてそう言葉を零す。


「私も、嬉しいんだよ」


私が微笑むと、ふわっと私を抱きしめて来た。


「寂しい思いさせてるのに……。ほんと、ありがと」

「ありがとって言い過ぎ」

「いくら言っても言い足りないよ」


私の髪に徹が顔を埋める。
そして大きく息を吐き出しているのに気付いた。


「ずっと、こうして触れてたくなる……」

「今日は、徹のお好きなように」


私がそう言うと、徹が突然咳き込んだ。


「おまえ、ドキッとさせるようなこと言うなよ。逆に何も出来なくなる」


苦笑を滲ませた声が耳元に聞こえてくる。


「ごめん」


何と言ったら良いのか分からなくなって、私は謝っていた。


「……今日は、ずっと一緒にいたい」


その低くて甘い声と共にぎゅっと抱き締められて、心までもぎゅっと締め付けられた。