二か月ぶりのキスは、甘くて激しくて、私の思考を停止させてしまう。
いくら死角になる場所とは言え、誰か通るかもしれないと思うのに離れられない。
何もかも忘れて溺れてしまいたくなる自分を必死で引き留める。
壁に押し付けられた背中までもがもどかしい。
私の身体を滑る徹の手がとても熱かった。
「……文子、ごめんな。なんか俺ばっかり余裕なくなってて。こんなとこに引っ張り込んで」
徹は、今の今まで熱く私に触れていた手を止め、ぎゅっと握りこぶしを作り堪えるように囁いた。
「でも、おかげでまた頑張れそうだ」
私に少し無理をした笑顔を向けたかと思うと、またその腕に包まれた。
「我慢ばかりさせて申し訳ない」
徹の目の下には黒い影が色濃く出来ていた。
きっと、ゆっくり寝ることも出来ないんだ。
「いいって。私のことはいいから、今は自分のことだけ考えて」
徹の足手まといにはなりたくない。
徹の邪魔になるようなことだけはしたくない。
徹が名残惜しそうに私から手を離す。
「じゃあ、おまえも仕事頑張れよ」
「徹もね」
少し痩せたように感じるその背中を見送る。
そして、これでまたいつ会えるのか分からない、一人の時間が始まる。
そのことにまた寂しさを感じた。



