「文子は、全然平気そうだな」
徹が私の両肩を掴んで身体を少し離し、顔を覗き込んで来た。
久しぶりに間近に徹の顔を見る。
その目はとても優し気で、そして少し寂しそうにも見えた。
「そんなことないよ。私だって、本当は……」
私だって寂しかった。
毎日、寂しかった。
「ごめん。分かってる。変なこと言って悪かった。俺を思って我慢してくれたの分かってるから。ただ、少し甘えただけ」
そう言って私の頬に優しく手のひらを滑らせる。
私の存在を確かめるように、大事そうに触れて来る。
そして私に注がれる甘く切なげに揺れている目と頬の手のひらの感触が、私にまで切なさを伝染させた。
こんな表情の徹を見ることは滅多にない。
だから、いつも以上にドキドキとしてしまう。
「触れたくて触れたくて、たまらなかった」
眼鏡の奥の熱のこもった目。
そんな目を見れば次にどうされるかが予想出来て、さらに心拍数が上がる。



