でも、なんとなく、その問題とはまだ向き合いたくない、というのが本音だった。
徹から何か言われているわけでもない。
そのことにどこかホッとしている自分がいる。
まだ研修医になったばかり。
今は寝る間を惜しんで経験を積む時期で、徹もそんなことを考えている余裕はないはずだ。
そう思っている。
でも、本当は自分自身に自信がないのだ。
医者となる徹と家族になって一緒に暮らしていく自信が――。
予定がまっさらになった私は、重い腰を上げ買い物にでも出掛けることにした。
最近買っていなかった洋服をブラブラと見る。
世間では今一番いい気候の時期だ。
買い物で疲れた足を休めるため都内の公園のベンチに腰を下ろした。
週末の晴れた日、家族づれや恋人同士と思われる人たちが大勢いる。
暖かい日差しのもと笑い合い、語り合って、とても楽しそうだ。
そう言えば、子供の頃もこんなふうに他の友人たちを羨ましがったっけ。
友人たちは、両親とどこに行っただの何をしただのと話していた。
それを聞く週明けの月曜日が私には憂鬱だった。
そして寂しかった。
でも、私はもうあの頃の子供じゃない。
子供と過ごせない親の事情も理解できる大人だ。
それでも心の片隅で感じてしまう寂しさが、嫌だった。
大人になりきれていないようで、心許なくなる。
理由も事情もすべて分かっているのに感じてしまう寂しさを、やり過ごしたくてたまらない。
その寂しさに向き合ってしまったら、多分、私と徹は今のままではいられなくなる。
そう心のどこかで感じているからだ。



