(今日無理になった。全然会えてなくてごめん。なんとか次の休みには会おう)


休日の朝一番に、スマホが鳴った。
徹からのメールが表示されていた。


徹が研修医になって早一か月。

まだ一度もまともに会えていない。

大学病院での研修がハードなものだということは知っていた。
これでも病院で働く身、間近に見ていればよくわかる。

朝から晩まで拘束され、宿直もある。機械のように働かされる。
研修医とはそういうものだ。

本当はこの日は徹と私の休みが合う初めての日で、ずっと前から楽しみにしていた。
前の晩にパックをしたりして、私も相当の気合いが入っていた。

徹が見ていないからこそ、大きく肩を落とした。

この、楽しみにしていた気持ちの持って行き場がなくて、溜息をつくしかない。


(いいよ。徹が大変なのはよく分かってるから私のことは気にしないで)


でもこればっかりは仕方のないこと。
医者の仕事の過酷さは嫌って程分かってる。

子供の頃から見て来たのだ。
自分の父親を。

そう思って、苦笑する。

あんなに忌み嫌っていた職業の人を結局恋人にしてるなんて。


子供ながらに、「絶対お医者さんとは結婚しない!」なんて思ってたのにな。


ベッドの上で一人また溜息をついた。


結婚――。


その二文字をここのところ意識してしまうようになった。

私も今年26歳になるし、徹も医大を卒業した。
考えてもおかしくはない。

でも――。