うーん、とけのびをして起きると
午前5時半。まだ学校までには時間がある。
なにしよっかなー。
なんて、考えていると階下にいるお母さんに呼ばれた。
「愛未、ちょっと来て!」
んー、なんでしょー、
と返事をして階段を降りていく。
「あんた来週テストじゃあないの?」
ギクッとして身を引いた私。
「え、て、テスト?あ〜、そうなんだ来週かぁー」
とその場しのぎの返事をする。
こんなの、お母さんにはききっこないのにね。
「沙羅さんに頼んだから来週1週間凛人の家で勉強ねっ!」
ビシッと人差し指をこちらに向けて言うお母さん。
「ふーん、凛人の家に1週間ねーほー」
って、
「凛人の、家に1週間?!?!」
「そうよ、沙羅さんにはもう、ちゃんと言ってあるわ。」
沙羅さんというのは、凛人のお母さんのこと。家族ぐるみで仲の良い月島家と松高家。昔は、しょっちゅう泊まりにいってたなー、
なんて、考え事してたらお母さんに釘をさすように同じことを何度も言われた。
「あんたの学力向上のためだからね、なーんで、凛人はできて愛未は出来ないんだか…」
そう。凛人は勉強がとても出来る。テストではいつも学年上位にいる。
しかし、私は平均より上か下かってところをさまよってる。
「凛人の家に1週間かぁ…」
ポツリと呟いたその言葉はシーンとした空気に吸い込まれていった。
「あっ、愛未。」
と部屋に行こうとしたところで呼び止められた。
「なに?また、何かあるの?」
ちょっと、不機嫌そうに返事を返した私。
「あのね、凛人の家1週間二人だけになるけど、いい?」
は?どういうこと?沙羅さんは?なっちゃんは?陽太さんは?
「え?なっちゃんとか、は?」
焦って、聞く私。
「千葉県にいるおばあさんが倒れてしまったそうで、なっちゃんと沙羅さんはそっちへ2週間位行ってて、陽太さんは仕事の関係で…」
しゅんとする私。別に凛人と2人きりが嫌なわけじゃない。でも、凛人は実は「人に何かを教える」事となるとちょっと、いやかなり。怖いんだよね…
凛人の家誰もいないなら、凛人がウチ来ればいいんじゃないかな?
ピコーンとひらめいてお母さんに相談してみた。
「おかーさん、凛人の家に誰もいないなら凛人がウチくればいーんじゃないの?」
名案だと思ったけど、お母さんは横に首を振った。
「それがね、お母さんもそうしたいのだけど、仕事がどうしても昼頃から出て、朝方までやらないといけないから…」
お母さんの哀しそうな顔を見て私は、心を打たれ凛人との1週間の生活をしぶしぶ承諾した。
「分かったよ、お母さん!私勉強頑張るね!」
と笑顔で言った。
お母さんも、笑顔になってくれた。